強引上司と過保護な社内恋愛!?
「あの、此処からだったら歩いて帰れますから」

「俺は帰れない」

「あれ、桧山さんってどこ住んでましたっけ?」

「月島」

「結構遠いですね」

タクシーだと5000円以上10000円未満といったところだろうか。

「じゃあ、泊めて。泉の家」

手を握ったまま暫しの沈黙。

これもきっと桧山さんなりのオヤジギャグの一環に違いない。

…全然笑えないけどね。

「駄目に決まってるじゃないですか」

私は平静を装ってお断りする。

「何で?この間は泊めてくれたじゃん」

「そしたら桧山さん変なことしたじゃないですか」

再び、沈黙。

「今日は変なことしない」

その後めっちゃ小声で「多分」と付け足した。

「信用なりません。駄目です」

毅然とした口調で言うと、何だよ、それー、と桧山さんはブーイングしてくる。

「じゃあ、コーヒー飲んだら帰るからさ」

桧山さんは私の手を取り再び家の方へと歩き出す。

「今日は駄目です!部屋も散らかってますし!」

「どーせいつも散らかってんだろ?」

図星を突かれ、私は反論出来ずに黙りこむ。
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