強引上司と過保護な社内恋愛!?
この数週間、話したくて謝りたくてずっとヤキモキしていた。

だけど、桧山さんは私を避けているのか仕事以外まともに話す隙を与えることはなかった。

さすが出来る男。

『いずみ』

だから今日、名前を呼んでくれただけで、どれだけ嬉しかった事か。

涙がじんわり滲んできたので私はワインと一緒に体内に押し込めようとする。

…そもそも、桧山さんは私と話すことなんて何もないからね。

お堅い私に気まぐれでチョッカイをだして面白がってただけなんだ。

それなのに、男性に免疫のない私はちょっとだけ特別な存在なのかなー…なんて厚かましくも勘違いしてしまった。

その結果、おっかない父親の前であんなしゃしゃった態度をとちゃって。

『知った口きくなよ!』

桧山さんに言われた台詞を想い出すと、ズキリと胸が痛む。

これ以上、私に誤解させないように、面倒臭い詮索をされないよう、その他の女子と同じ扱いをしてキッチリ一線を引いて見せてる。

もうこれ以上構うな…って事か。

…だったら、鼻っから手ぇだすなって話しでしょう!

私が面倒臭い女だってことが解らないほど鈍くさい男じゃないハズなのに。

私はグラスのワインを一気に飲み干す。

「おかわり!」

私がグラスを差し出す坂田は嫌そうに思いっきり眉を顰める。
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