強引上司と過保護な社内恋愛!?
しかし佑樹君は私の鞄を肩に掛けたまま返す素振りを見せない。

「あ…あの、鞄ありがとう」

しかし佑樹君はニッコリ微笑んだまま返そうとしない。

「もう大丈夫だから…鞄を」

「もしかしてやけ酒の原因は桧山さん?」

佑樹君は小首を傾げて、私の顔を覗きこむ。

一瞬、何のことを言われたのか意味がわからずキョトンとする。

「また何か酷い事言われたんだ」

佑樹君は挑発するように唇の端を上げて、続け様に質問をしてくる。

「別に…関係ないでしょ」

いつもと違った不躾な態度に違和感を覚えて、素っ気ない口調になる。

「いずみさん、肉まんがついてるよ」

佑樹は身を屈めて、私の口元をペロリと舐めた。

「とれた」

そして鼻先でいつもとはちょっと違った妖艶な笑みを浮かべる。

こ…この色気、仔犬じゃあ、ない。

「忘れさせてあげよっか?桧山さんのこと」

再び可愛い顔が間近に迫ってくる。

ああ…やっぱり若い子って近くで見てもお肌がつやつや…

30過ぎると桧山さんですら目じりに薄らちりめん皺が見えるもんね。

往年のプレイボーイも寄せる年波には勝てないのか…

なんて思っているうちに唇に柔らかな感触が重なる。

私のやさぐれた心に人肌のじんわりした温もりが伝わる。
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