強引上司と過保護な社内恋愛!?
…なんか心地いいな。

一人であの汚い部屋でメソメソして過ごすくらいなら、このまま流されちゃってもいいかもしれない。

そんな私の邪な思考とは裏腹に、急に温もりが唇から離れていく。

「ひどい…泣くほど嫌?」

佑樹君は目を細めて私に非難の視線を向ける。

「は…?へ…?」

私は驚いて手の甲で頬を拭う。

いつの間にか目からは涙が溢れていた。

「ごめん、違う。嫌だった訳じゃないの」

そう言っても頬を伝ってボタボタと涙が落ちる。

頭の中では成り行きに身を任せようかな、なんて考えていても、自然と身体が拒否していた。

桧山さん以外の人を。

佑樹君はそんな私を見てあきらめたように肩で大きく息をつく。

「そんなに好き?桧山さんのこと」

「わからない」

私は口元を押さえて首を横に振る。

…うそ。

私は桧山さんが好きだ。

それも、ちょっと素っ気なくされただけで、こんなみっともなく取り乱すくらい。

「佑樹君こそ、私みたいな面倒そうな女は苦手だって言ってたじゃない」

「あ、ちゃんと聞こえてたんだ」

佑樹君はテヘっと笑って誤魔化す。
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