強引上司と過保護な社内恋愛!?
「だけど、大きな声で冷やかしたりしないでいただけると助かります」

また皆に聞こえて変な噂が広がっちゃうからね。

「わかったわかった!静かに愛を育みたいんだな!その気もちはよぉく解った!俺も男だ!」

…いや、違う。全然解ってない。

しかし一々否定するのも面倒なので「一つよろしく頼みます」と言ってペコリと頭を下げて、そそくさとその場から立ち去る。

給湯室へ行くと、戸棚からコーヒーメーカーを取り出した。

フィルターをセットして、水を注ぐとスイッチをオンにする。

おじさま達にすごく喜ばれるので、時間がある時は出社したらコーヒーの用意をするのがなんとなく日課になっている。

ポタポタとコーヒーがフィルターを通して落ちてくると、こうばしい香りが漂ってきた。

しかし、さっきのは一体なに?

佐々木さんのセクハラを注意していた桧山さんを思い出す。

動物たちに冷やかされて精神的苦痛なのは自分の方なんじゃないの?

随分嫌われたもんだな。

コーヒーがポットに溜まって行くのをぼんやり眺めていると、ゴホゴホと咳こむ音が聞こえて来た。

桧山さんがひょっこり給湯室に姿を現す。

「あ、いたいた」

どうやら私を探していたようだ。
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