強引上司と過保護な社内恋愛!?
「あのさ、風邪薬とか持ってない?」

言ってる側から桧山さんはゲホゲホと咳こむ。

「熱は?」

「計ってないから解らない」

私は手を伸ばして桧山さんの額に触れると、もう一方の手を自分の額に添える。

「熱いです。絶対熱がありますよ」

あ、やっぱ?と言って桧山さんはへラリと笑う。

「今日は帰った方がいいですね」

私は手を離そうとすると、桧山さんに手首を押えられた。

「田母神の手、冷たくて気持ちいい。もうちょっとこのままでいて」

桧山さんは苦しそうに息をついた。

こんな時になんだけど、ちょっと萌える。

指先から桧山さんの熱が伝わってくるようで、私の顔も熱くなる。

「今日は大事な会議があるんだ。それが終わらないと帰れない」

「でも会議に出席したらみんなに風邪うつしちゃいますよ?」

そうだな、と言って桧山さんは薄く笑う。

いつものような覇気は感じられず、顔色も悪いので見ているこっちも辛くなってくる。

「あまり無理しないでくださいね」

「田母神…」

桧山さんはブラウンの瞳で私をジッと見つめる。

その時廊下から女性の話声が聞こえて来た。

私はビクリと身体を強張らせ、慌てて桧山さんの額から手を離した。
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