強引上司と過保護な社内恋愛!?
「嬉しかったです。少しでも桧山さんの本音が聞けて」

桧山さんは長い睫毛を伏せて、微かに口角を上げる。

なんだかその表情は酷く寂しそうに見えた。

私は右手を桧山さんの頬に添えて、自らそっと唇を重ねる。

「私では桧山さんの支えにはなれませんか?」

しまった…。

勢いでまた出しゃばった事を口走ってしまった。

しかし、後悔してももう遅い。

私は腹を括ってブラウンの瞳を真っすぐに見据える。

「もう充分なってる。これ以上支えてもらったら一人じゃ立てなくなる」

桧山さんは苦しそうに眉を顰めると、再び私に口付ける。

だったら一人で立てなくなっちゃえばいいのに。

私は桧山さんの背中に再び手を回して引き寄せる。


―――結局、その願いが叶えられることは、ない。

こんなに近くにいても、私は彼の胸の内を知り得る事は出来なかった。

< 226 / 360 >

この作品をシェア

pagetop