強引上司と過保護な社内恋愛!?
「スタート!」

号令と共に私は日本酒の徳利を逆さにしてクイッと飲み干した。

うーん…やっぱり不味い。

相変わらず普通酒だな。

空の徳利を逆さにして頭に乗っけた瞬間、会場から歓声が上がる。

隣を向けると、桧山さんが一足遅れてようやく飲み終わった後だった。

「相変わらず口ほどにもない」

私はフンと鼻で笑ってやる。

くっそ、と言って桧山さんは手の甲で口元を拭う。

「やっぱり、気合が足りてないんじゃないですか?そんなんでインドネシア行っちゃって大丈夫なんですか?」

大隈園長のお得意の台詞を真似て言ってみる。ご本人はガッハッハッと豪快に笑いご満悦だ。

「言うようになったねぇ」

桧山さんはニヤッと笑う。

「修行しましたから」

私が髪を掛け上げニッコリ微笑むと、会場から松井コールならぬ田母神コールが湧きおこった。

…これは…想定外の展開だ。

私がオタオタしていると松井課長と目が合いバチっとウィンクされる。

五十嵐さんがニヤニヤしながら前に出てくると「泉ちゃん、どうぞ」と言って桧山さんを後ろから羽交い絞めにする。

「一発殴ってやった方がいいですよーこの薄情者を」

すぐ目の前の席に座る加奈ちゃんが鼻の頭に皺を寄せて言う。

「いずみん!おもいっきりいけー!」

木彫りの小日向さんも外野からデッカイ声でガヤってきた。
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