強引上司と過保護な社内恋愛!?
ほろ酔いのふわふわした足取りで自宅マンションへ帰宅する。

鍵を開けて電気を付けると、朝出て行ったままの荒れた部屋に思わず溜息が出た。

両親は、3年前父の定年を期に2人の故郷である茨城県に帰った。

現在父の実家から幾ばくかの土地をもらい畑を耕して農家の真似事をしている。

私は職場が東京なので、其れを機に地元である春日町のワンルームマンションで独り暮らしを始めた。

余談だが引っ越しの際には両親から絶対マンションは買うな、ときつく言われている。

男っ気のない娘が増す増す縁遠くなる事を心配しているようだ。

シャワーを浴びて部屋着の着古したロングTシャツとくたびれたスウェットに着替える。

邪魔な前髪をクリップで止めて、コンタクトを外して眼鏡にチェンジする。

まだ微妙に飲み足りなかったので冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、ベッドの前に置かれた人を駄目にするビーズクッションにドカリと腰を下ろしテレビを付ける。

プルタブを空けると炭酸の抜ける音がした。

「ふいー」

ビールを飲んで一息つく。

フト脇に置かれた姿見鏡に映った自分と目が合う。

干物女子を通り越し、おっさん女子だ。

リアルおっさんに差し掛かった桧山さんの方が、まだまともな生活を送っているんじゃなかろうか。
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