強引上司と過保護な社内恋愛!?
送別会の夜以来、桧山さんの姿を見かけることはなかった。

あの後も桧山さんは大隈部長とその取り巻き達に連れられて夜の街に繰り出して行った。

結局、最後のお別れは言えないまま。

桧山さんが座っていた席には、既に新班長の五十嵐さんが座っている。

最初は違和感を覚えたものの、それが最近では当たり前のようになってきた。

こうやって徐々に桧山さんの事を思い出すこともなくなって、私は元の平穏な生活に何となく戻って行くのだろう。

本当に、それでいいの?

時折そんな想いが頭を過るが、私は見て見ぬふりをして自分の気持ちに蓋をする。

そうやって心乱すものを排除しながら30年間生きてきたんだから。

仕事に意識を切り替えようとパソコンに向かうと、メールを一件受信した。

送り主は五十嵐さんからだ。

クリックして中を開いてみる。

「暁の出発今日だってさ。ANA NH885便」

胸の鼓動が大きく跳ねた。

別に関係ないし…。

そう思いつつも、速攻でGoogle Chromeを立ち上げる。

NH885便を検索すると、成田発デンパサール行きで15:00フライトの便だった。

慌てて時計を見ると11:25。

今から行けば、チェックイン前に間に合うかもしれない。
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