強引上司と過保護な社内恋愛!?
慌てて社屋を飛び出し、ダッシュで駅まで向かう。

タクシーで行こうか一瞬迷ったが、渋滞に巻き込まれる懸念があるため、地下鉄とJRを乗り継ぎ日暮里駅から特急で向かうことにした。

よりにもよってなんで羽田出発じゃないんだっつーね。

苛立ちながら鞄から一枚の名刺を取り出す。

着任した日に桧山さんからもらったもので、裏にはプライベートの携帯番号が書かれていた。

今から行くので待っててください、なんて突然連絡したら引くかな。

寧ろ慌ててチェックインされたらどうしよう。

良からぬ妄想を巡らせてウダウダ迷っているうちに、特急は空港駅へと到着する。

降り立ったのは成田空港第一ターミナルの地下一階だった。

最寄りのフロアマップを見ると出国ロビーは4階にあるようだ。

スーツケースを引きづる人たちに紛れエスカレーターを駆け上がっていく。

すれ違う人達に怪訝な表情で振り返られるが、気にしている場合じゃない。

4階に着く頃にはすっかり息が上がっていた。

ゼーゼーしながら、名刺に書かれた携帯番号に電話を掛ける。

『お客様のお掛けになった電話番号は現在使われておりません…』

しかし、無機質な音声が繰り返し流れるばかり。

嘘でしょ…携帯解約されてるし…

会社用携帯に電話をすると知らないおっさんが出た。

どうやら既に違う人に貸与されたらしい。
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