強引上司と過保護な社内恋愛!?
『桧山さんは…暁さんは出来損ないではありません!』

レセプションの夜、小心者の泉がおっかないうちの親父に啖呵を切った。

いつまでもフワフワ浮き足立ってる俺を歯がゆく思う親心から来るいつものお小言だったが、親父に免疫のない泉は顔を真っ赤にして怒ってる。

俺のために、こんな怒ってくれるなんて。

思わずジンとしてしまった。

『それに桧山さんは物乞いなんかじゃなくありません!彼はデッカい物を作るんです!』

その瞬間、俺は石のように固まった。

いつか、俺が泉に言った台詞。

彼女は其れを覚えていたのだろうか。

仕方ない。それが会社の方針なら従うまでだ―――

そんな風に諦めて今の状況に甘んじてる自分が急に恥ずかしくなった。

しかも自分は何をやっても出来る…なんて自惚れてすらいた。

あの時、必死な顔で謝って来た彼女に心無い態度をとってしまった。

傷ついた顔が今でも忘れられない。

ああ、いくつになっても俺はガキだ。

自己嫌悪で窒息しそうな夜だった。


そしてその翌週、俺は合同プロジェクトの公募に志望シートを提出する事となる―――
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