強引上司と過保護な社内恋愛!?
出発日当日―――

成田空港に到着し、タクシーのトランクから重いスーツケースを引っ張りだす。

久しぶりの海外生活に俄か興奮し期待が高まるが、日本に残していく心残りを思うと少し胸が痛む。

結局、最後まで泉ときちんと話しをすることは出来なかった。

今更…何を言えばいいんだ。

きっと自分勝手で意気地のない俺に、優しい泉も愛想をつかしただろう。

きっと今頃、あの小僧と仲良くやっているに違いない。

そこまで考えるとデッカイため息が出た。

…そうだ、俺には仕事がある。

新天地で仕事に生きるんだ。

いざ第一ターミナルのチェックインカウンターへ向かうと、受付で騒いでいる妙な女が目に着いた。

「あの!桧山暁って人は既にチェックインされていますか?!」

しかも俺の名前叫んでるし。

まさか…と思って近づいて行ってみると泉が危機迫る顔でグランドホステスに詰め寄っている。

その瞬間、俺の頭には青空にはためく黄色いハンカチが思い浮かんだ。


『俺のこと、覚えてた?』

死がふたりを分かつまで愛し慈しみ貞節を守ることを、泉に誓う日がきたら聞いてみよう。

< 285 / 360 >

この作品をシェア

pagetop