強引上司と過保護な社内恋愛!?
「アッツ!おはよう」

簡易オフィスで仕事をしていると、恰幅のいい中年の女性がニコニコ笑顔で出勤して来る。

「おはよう、ニーさん」

彼女は、シャンバラ・バリの建設現場で事務や作業員の身の回りの世話をしてくれている。

アツキ、という名前は発音しづらいので俺をいっつもアッツと呼ぶ。

「これプレゼントよ」

ニーさんは手のひらサイズのアライグマのぬいぐるみを差し出した。

三十路過ぎの男へのプレゼントとしては、些か可愛い過ぎる代物だ

「娘が友達からもらったらしいんだけど、いらないっていうからアッツにあげようかと思って。好きでしょ?アライグマ」

「はい、大好きですね」

パソコンのデスクトップは牙をむいて威嚇しているアライグマの画像だ。

「なんでこんな画面なんだ?」とよく聞かれるけど、これが1番俺の中でキュンとする画像なのだから仕方ない。

その他にもデスクマットにはアライグマポストカードを何枚も挟み込んでいる。

お陰さまで現場の職員からは変わり者扱いだ。

だけど、日本に残して来た想う女性の写真を飾る女々しいヤツだと思われるよりかは断然いい。

デスクにニーさんからもらったアライグマのぬいぐるみを飾る。

改めて見ると、縫製が荒くちょっと不細工な感じがなかなかいい。
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