強引上司と過保護な社内恋愛!?
2. 猫の皮を被ったトラ
本日は木曜日。

会社近くの居酒屋で歓迎会を開催していただいている。

「ビールで大丈夫?」

左隣に座る松井課長が声を掛けてくれる。

「これ飲んだら焼酎をいただくので大丈夫です」

「今日は泉ちゃんの歓迎会だからさ、好きなの飲んで」

松井課長はニッコリ笑う。

「酷いな、俺のことはお忘れですか?」

私の右隣に座る五十嵐さんがすかさず突っ込んで来る。

私と同じく10月1日付けで、同じグループの営業企画部から営業本部へと異動となった。

涼しげな一重の目にスラリと高い鼻筋が精悍な印象を与える。

その横顔は大人の男性の色香が漂い、とっても素敵。

私の2つ年上で、桧山さんの同期というのだから驚きだ。

だけど、その左手薬指にはキラリと光るシルバーリングが嵌められているのが口惜しい。

こんな素敵な人が独身なわけないっか。

私は大ジョッキを両手で持ち上げグビっと飲む。

「田母神さんお酒飲めるの?」

五十嵐さんがこそっと耳元で尋ねる。

爽やかなコロンがふんわり香ってドキっとしてしまった。

「嗜む程度ですが…」

嘘だ。

実はかなりイケる口だ。

しかし、かわいこぶってみたりした。
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