強引上司と過保護な社内恋愛!?
「もし、泉がバリ島に行くっていうのなら桧山さんに会える手立てを整えてあげられないこともないんだけどなー」

「どういう意味?」

私は訝しげな視線を向ける。

「ビジターとしてシャンバラ・バリの現場へ見学に行けるよう手配してあげる、って意味」

うそ!と言って、テーブルに身を乗り出す。

「もちろん交通費と宿泊費は自費だよ」

それは…いいんだけどさ。

「でも…迷惑じゃない?向こうは仕事しているんだし」

まさかー!と言って真奈はブンブンと手を横に振る。

「泉が会いに行ったら泣いて喜ぶよ!桧山さん!絶対!」

「そ…そうかなあ」

真奈の熱い口調に乗せられて、何だか満更じゃない気がして来た。

「南国の青い空の下、2人でしっぽり過ごして来なさいよ」

しっぽり、の意味を妄想し、一瞬で耳までカアっと熱くなる。

「やだー!もー!真奈ったらぁ」

それは…悪くない…

悪くないどころか、最高じゃない。

こうなったらバリに行こう

私は固く決意した。

「サプライズで行ったらきっと燃えるね。間違いない」

更に真奈は悪魔のように甘い誘惑を囁き、私をたぶらかす。

「うん、そうする」

私はまんまと乗せられて、スッカリその気になった。

「鰻でも食べてしっかり精をつけときなさい」

「ちょっともう!何言ってんのよ」

怒ったようにわざとらしく頬を膨らませる。

しかし、米粒一つ残さずに私はうな重を完食した。
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