強引上司と過保護な社内恋愛!?
目の前に停まっているのはボロボロのバンだった。

シルバーの塗装は所々剥げていて、車のボディーはボコボコだ。

「どうぞ!タノシマさん!」

もはや「タ」しかあってないけど、この際いいや。

「あの、この車って走るんですか?」

「なにいってるの!走るよ!新しいのと同じ」

…イヤ、それは言い過ぎだろう。

不審感満載の視線を向けるけど「ダイジョーブ!モンダイないね!」と頑なに言い張ってべベックは無理矢理私を車に押し込んだ。

擦り切れたシートに私は渋々腰を下ろす。

真奈は経費をケチったに違いない。

日本に帰ったら文句をいってやろうと固く決意する。

「じゃ、出発しまーす」

べベックはそそっかしくも、後部座のドアが全開のまま出発しようとする。

「あの、ドア開いてますよ」

私はスライド式のドアを閉めようとするがスライドしない。

あれ?

私は両手で思いっきり引っ張るがドアはビクともしない。

「ちょっと!ドアが閉まらないんだけど!」

車がゆっくりと動き出したので焦って声をかける。
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