強引上司と過保護な社内恋愛!?
コテージの中庭に真っ白なクロスがかかったテーブルがセットされている。

ディナーはイン・ルームダイニングで、料理は1人のレストランスタッフが専属でサーブしてくれた。

潮風に吹かれ、波の音を遠くに聞きながら、シャンパンで乾杯する。

「日本はどうだ?」

プリップリのロブスターを頬張る私に桧山さんが尋ねる。

「桧山さんの置き土産となったオランダ大使館の案件ですが、お父様の計らいもあってか無事受注が決まりました」

私はドヤ顔で言う。

「何言ってんだ。俺の実力だろ」

外見は素敵になったけど中身は相変わらずのようだ。

「五十嵐とは上手くやってんのか?」

「そりゃあもう!」

私は満面の笑みを浮かべる。

「口頭継承で仕事を押し付けて来ないし、デスクも蹴らないし、無茶振りもしないし、セクハラしないし、本当に良い上司に恵まれたと思ってます!」

何だそれ…と言って桧山さんは不満気に目を細める。

「良かったな。おかしな上司がいなくなって」

嫌味で言われた台詞に「まったくです!」と、思わず答えそうになるが、私は無言のまま笑顔でかわす。

桧山さんはナイフとフォークでグリルしたビーフを切り分けてお上品に食べる。

建設現場で喧嘩していたラフな男と同一人物とは思えない。
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