強引上司と過保護な社内恋愛!?
「でもさ…俺と泉の距離ってちょっと遠くない?」

「4000キロ離れてはいますが、また会いに来ます!」

私は上から覆いかぶさるようにして、桧山さんの首根っこにしがみつく。

「いや…そうじゃなくてな」

桧山さんは苦笑いを浮かべ私の頭をくしゃりと撫でた。

「もう俺は泉の直属の上司でもないし、ここは会社でもない」

「はあ…」

言わんとする事が解らずに、私は首を傾げる。

「俺は泉の何なんだっけ?」

「フィアンセです」

私は紛れもない真実を力強く言う。

「だったらさ、敬語やめない?桧山さんも他人行儀だ」

はあ…と眉間に皺を寄せて考え込む。

じゃあ、なんて呼べばいいのかな。

私は暫し黙り込む。

「わかったよ。あっくん」

思考錯誤の結果そう呼ぶ事にした。

しかし、桧山さんはすげー嫌そうな顔をする。

「それはやめろー。30過ぎてあっくんは痛いだろ。痛すぎだろ」

「いいと思ったんですけどね。お母さんにそう呼ばれてませんでした?」

ほら敬語、と言って、桧山さんは頬をブニっと掴む。

「じゃあ、あつきさん」

桧山さんは満足そうに頷き頬から手を離した。

「2人の距離がまた一歩近づいたところで、更に愛を深めよう」

そして私を組み敷き、唇を塞ぐ。

白いシーツがひらりと床に舞い落ちた。


この日、あっくんの出勤が遅れたことは言うまでもない。

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