強引上司と過保護な社内恋愛!?
「もう一本飲むかな」

私はノロノロとソファーから立ち上がると冷蔵庫へ缶ビールを取りに行く。

その時、玄関のインターフォンが鳴った。

こんな時間に誰だろう。

しかもエントランスじゃなくて直接部屋まで来るなんて。

まさか…天才ブタかな。

近所に住む一つ上の暁さんのお兄さんを思い浮かべる。

独り暮らしの私を心配してか、差し入れを持ってたまに様子を見にきてくれる。

ちょっと掴みづらい独特の間があるけど、話せばなかなか良い人だ。

「桧山家の跡取りを産む大事な身体だから」と言って毎回ケーキやらフルーツやら和牛やらを渡して、そのまま上がらずに帰って行く。

いつも休日の昼下がりなどに来るので、金曜日とはいえ、こんな夜に来るのは珍しい。

インターフォンが立て続けに鳴らされるので、私は慌てて出ていく。

「はーい」

ドアを開けるとそこに立っていたのは意外な人物だった。

「どうしたの?」

私をジッと見つめる潤んだ大きな瞳。

無言のままギュっと抱きついてきた。

「何も聞かずに泊めてくれませんか?泉さん」

その傍らには大きなスーツケースが置いてあった。
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