強引上司と過保護な社内恋愛!?
「次はお前の番だな、肇」

正面のソファーに座った父親が膝の上に肘をつき、手を組みながら射るような視線で俺を見据える。

ガラステーブルの上にはズラリとお見合い写真が並べられていた。

「このお嬢さんなんてピッチピチの23歳よ。昨年慶應義塾大学を卒業して現在広告代理店にお勤めですって!」

右隣に座った母がニッコリ微笑みかける。

「此方のお嬢さんは30歳でフラワーアレンジメント教室を開業されているみたいよ」

左隣に座った姉が笑顔で写る女性の写真を押し付けて来た。

「23歳は若すぎて話が合わない。30歳はタイプじゃない」

やる気ナッシングの俺に、母と姉の顔から笑顔から消えた。

「あのロクデナシすら結婚すんのよ?!しかも品行方正なまともな女性と!」

痺れを切らせて姉は眉を吊り上げる。

フワフワ次男の暁が婚約してからというもの、長男である俺への風当たりが強くなった。

久しぶりに実家に呼び出されたと思えば、執拗にお見合いを迫られて、軽く軟禁状態だ。

暁が結婚を決めるとは手痛い誤算だったな…。

俺は苦々しい気持ちになる。

「はじめちゃん、お父さまはね、何も言わないけど職場では其れは其れは肩身の狭い思いをされているのよ」

母は柳眉を下げながら言う。

父親は何も言わずに斜め下45度に視線を向けて寂寥感を醸す。

夫婦で俺の情に訴えかけてくる作戦だ。
< 346 / 360 >

この作品をシェア

pagetop