強引上司と過保護な社内恋愛!?
泉さんは暁の婚約者なので会いに来る口実もあるし、優しく大事にしても下心には捉えられない。

ちっこいのはB専なのでイケメンの俺はタイプじゃないらしい。

そんな訳で二人とも俺に異性としての興味を抱く事もない。

程よい距離感で女子に甘え、そして甘やかす。

自分の婚約者と元部下相手に、俺が密かに擬似恋愛を楽しんでいる事を知れば、暁の逆鱗に触れる事間違いないだろう。


「暁さんが4月に帰国するの」

鍋の白菜摘みながら泉さんはバツが悪そうな顔で言う。

「其れはよかったな」

婚約者である彼女にとっては喜ばしいはずの事なのに、まるで心変わりした事を恋人に告げるような重苦しい雰囲気だ。

その理由は俺の隣に座るちっこい女に、ある。

あからさまに顔が曇り、ブハーとデッカいため息を吐いた。

弟の暁がこの家に帰ってくるとなれば、この女もいよいよこの家から出て行かざるえなくなる。

「加奈は此れからどうすんだ?暁が帰って来たらこの部屋を出て行くんだろ?」

「適当な部屋を探しますよ」

浮かない表情のまま、もそもそと鶏肉を頬張りながら曖昧に答える。
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