強引上司と過保護な社内恋愛!?
3. 果敢に攻めるアライグマ
わくわく動物園の朝は早い。

何故なら園長の出社が早いからだ。

体育系縦社会の営業本部では8:00出社が暗黙のルールとなっている。

加奈ちゃんを始めとする女性職員は定刻の9:00に合わせて出社しているが、私は資材管理部にいた頃から朝は早く来ていたので、8:00過ぎには出社している。

二日酔いの死んだ目をしたおじさま達に紙コップに入れたコーヒーを配る。

「…ナ、ナイチンゲール?」

オコゼのような顔をした佐々木さんが潤んだ瞳で見上げる。

「大袈裟ですね」私は苦笑いを浮かべる。

コーヒーを配り終えると、行き先が記載されたホワイトボードを見て担当動物の同行をチェックする。

班長桧山は直行。昨日は接待だったに違いない。

巨漢の伊藤さんは昨日から福岡出張だ。

就業中に『福岡 グルメ オススメ』でググっているを思い出してちょっとイラっとする。

木彫りの小日向さんは何も行き先が記載されていなかった。

あれ…まだ出社してないけど、どうしたんだろう。

今日は朝一で営業会議があるはずなのに。

始業前に電話が鳴り、胸騒ぎがする。
< 63 / 360 >

この作品をシェア

pagetop