強引上司と過保護な社内恋愛!?
広大な敷地の一角にある某官庁に到着する。

桧山さんは「こんにちはー、美嶋建設でーす」と言って、入口にある受付の人に声を掛ける。

そして受付に置かれたボックスにヒラリと一枚名刺を入れた。

「じゃ、よろしくお願いしまーす」

再び受付の人に声を掛けるとそのまま出口へ向かって歩いていく。

「へ…ちょっと」私は慌てて後を追う。

「営業って、ボックスに名刺入れるだけですか?」

うん、とあっさり桧山さんは言う。

「アポとって担当の方と直接お話ししたりしないんですか?」

桧山さんは人指し指を横に振る。

「いいかい、ラスカル。お役所の人だって忙しいんだ。業者が挨拶に来る度に話している時間なんてない」

でも…といって私は眉根を寄せる。

クソ忙しいなか、このためだけにわざわざ同行させられたのだろうか。

そう思うと何となく納得がいかない。

「こうゆうのは塵も積もれば、だ。地道に脚を運ぶことが受注へと繋がる」

桧山さんはもっともらしく言うけど、本当にこれで何億円単位の仕事に繋がるんだろうか。

半信半疑のまま、桧山さんにくっついて某官庁を後にした。
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