強引上司と過保護な社内恋愛!?
「タワークレーンの組立についてはフロアクライミング方式とマストフライミング方式という2つの手法があってな」

桧山さんは活き活きとしてその二つの方式について話し始める。

しかし、専門用語が多くて説明されている内容がいまいちイメージ出来ない。

何かのスイッチが入ってしまったのか、桧山さんはタワークレーンについて更に熱く語り始める。

「通常我が社では大型建造物を建設する際によく使用しているタワークレーンの吊り能力は720tm(トンメートル)で、これは22.5mの作業半径なら一度に32tの吊り荷を揚げられる力を備えていることを示しているんだ」

「フェクショ!」

冷たい風に晒されて、思わずクシャミをする。

桧山さんの熱い語り口調とは対照的に、私の身体はすっかり冷えてしまったようだ。

話しの腰を折ってしまったので、すいません…といって鞄からハンカチを出して慌てて口元を拭う。

「いや俺の方こそすまなかったな、つい」

桧山さんはバツが悪そうに頭を掻く。

私は首を横に振った。

「なかなか興味深いんですね。タワークレーンって」

鼻を啜りながら言ってもあまり説得力がないかもしれないけど。
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