哀し

閉会式も終わって荷物をまとめてる
みんな帰ってて気づけば数人しかグラウンドに残っていなかった


「愛美、今いい?」
「え?うん。」

絢斗が来て少し人がいないとこに連れてかれた

「どうしたの絢斗?」
「あのさ、」

ずっと好きだった。付き合ってほしい。


絢斗が言った言葉が信じられなくて一瞬私の思考は停止する


「愛美、最近あいつと仲いいから焦った。」
「いや…別にそんなんじゃな…」
「返事、考えててほしい。」

真剣な絢斗。

「うん…考えておく。」
「じゃあな。」


女癖が悪くていろんな女の子を泣かせてる絢斗が私のことを好き…?


「なーんでおっけいしないんだよ~?」
「あ、先輩…」
「聞かれる前に言っておく。のぞき見だ。」
「っぷ…そんなはっきり言う?」
「お前怒ると怖いから。」

思わず笑ってしまった。

「のぞきなんて悪趣味。」
「まあね。あ、打ち上げ行く?後夜祭行く?」
「ん~、先輩はどうするの?」
「お前に合わせる。」
「え…?」
「ん?」
「……打ち上げ行く。」
「んじゃ行くか。」

私に合わせる。
正直驚いた。期待した。
聞き返しても普通だった。

そうだ。先輩には彼女がいる。
これが先輩の普通なのかもしれない、もしくは後輩として可愛がられてるだけかもしれない。



先輩の3歩後ろをついて歩く。



「なんでそんな離れてんだよ。」

後ろを向いて笑う先輩

「暗いから。」
「暗いからもっと近づけ。危ないだろ。」

そういって私に手を差し出す先輩
手は繋がずに先輩の隣に行って並んで歩く
先輩の差し出された手は納められた


「素直じゃないよね。マナって。」


ふっと笑う先輩の手が私の手を掴む
マナって呼ばれた
それだけでただただ嬉しかった


「私は素直だよ。」

下を向いて答える
繋がれた手を解こうと手に力を入れて思いっきり振る

手がほどけて足音だけが聞こえる




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