哀し
日常
体育祭も終わって1週間
私たちは通常の授業になった。
3年生は本格的に受験やら就職に向けて頑張ってるらしい
1年生の私たちはそんな3年生を見ながらもまだまだだと少し余裕がある
「愛美、帰ろう。」
「あ、絢斗。」
絢斗が迎えに来たのを見て荷物をまとめる
あの後結局絢斗と話をして
俺が忘れさせる
どーせ後戻りできないくらい好きになってるだろうし?
という言葉に甘えてしまっている
「俺帰りに寄りたいとこあんだけどさ。」
「ん~、一人で行く?」
「いや、一緒に行こう。」
「おけ、どこいくの?」
「駅前に新しくできたCDショップ。」
「あ、そこ私も行ってみたかった!」
今までと全然変わらない他愛もない会話をしながら駅前に向かう
これが普通なんだと思う
わたしより背の高い絢斗を見上げる
「どうした?」
「え?いや、なんでも。」
見ていたことに気づいた絢斗が笑う
少し違和感があった
本当にこのままでいいのか、私の居場所はここなのか
「後輩ちゃん。」
下を向いて歩いてるとふいに懐かしい声がした
「あ、先輩。」
参考書を買いに来ていたのか本屋から出てきた先輩がいた
「ふーん、へー、」
「なんですか!そんなに見て!」
せんぱいは私と絢斗をにやにやしながら見て
いや、やっぱりお似合いだよな~
とヘラヘラ笑った
「先輩に報告しないとは何事だ!」
「え?手は繋いだ?どこまで進んだ?」
とか気にする様子もなくからかってくる
「先輩には関係ないでしょ!」
正直イライラした
少し期待してた、嫉妬とかしてくれるんじゃないかって
でもそんなものなくて先輩はずっと笑ってて
私はただの後輩
あれは先輩の気まぐれ
そのことがよくわかった
「たまには声かけろよ~俺寂しいじゃん。」
「先輩声かけてくれる後輩もいないの?」
「うん。一番まともな後輩がお前。」
「私が一番まともな後輩とか先輩かわいそう。」
「だよな。」
だからたまには仲良くしろよ
って笑いながら先輩より背の高い私の頭を撫でてくる
それすら苦しかった
「しょうがないから、仲良くしてあげる。」
でも、これが普通の形なんだと思う
先輩と後輩、これが元々の私たちの関係なんだと思う
その答えを聞いて先輩は笑って手を振って帰って行ってしまった
「愛美、大丈夫か?」
よほど泣きそうな顔をしていてんだろう
絢斗が私に顔を覗き込む
「大丈夫!」
精一杯のえがおで返事をする
帰るか。
そんな私を見て絢斗が私の手をつないで歩きだす
その日の帰り道は
会話がなかった