ねぇ、松風くん。
「…あ、あの。連絡先はごめんなさい!代わりと言ってはなんですけど…お店のクーポン券差し上げるので、またお店に遊びに来て頂ければ嬉しいです。」
俺と男の間に入った佐々木さんは、そう言いながら困ったように笑ってクーポン券を差し出す。
こんな時ですら、相手のことまで考えてる佐々木さんってお人好しすぎる。
優しいにも程がある。
その優しさは、誰に対しても平等で裏表のないものだ。
佐々木さんの手からクーポン券を受け取ると、渋々頷き会計を済ませた男子高校生2人組は帰って行った。
「松風くん、助けてくれてありがとう。」
「…いや。別に。」
”どうしようかと思っちゃった”と笑顔を浮かべる佐々木さん。
間に合って良かった。
俺が来なかったら、どうしていたんだろう。きっと、流されて教えてたんだろうな。