ねぇ、松風くん。
「葵くん。」
「…何だよ、気色悪い。」
名前を呼ばれて振り向けば、姉ちゃんが腕を組んで俺たちを見ていた。
「この店、”ナンパ行為は禁止”になってたの?」
”オーナーの私も初耳だったわ〜”と、わざとらしく棒読みした後、
「んま、優ちゃんに変な虫が付かなくて良かった!」
と言って佐々木さんを抱きしめた。
かと思えば、佐々木さんの耳元で俺には聞こえないようにコソッと何か呟く。
その瞬間、顔を赤くして嬉しそうに微笑む佐々木さんを素直に可愛いと思うと同時に、俺にだけそんな顔してればいいのに。
なんて思う俺は一体どうなってしまったんだろう。
つーか、それにしても姉ちゃん、佐々木さんに何て言ったのか気になる。
ーー謎な感情に悩まされていた。