ねぇ、松風くん。
「わっっ!!」
ほんの一瞬だった。
自分の体がフワッと宙に浮く感覚、それとほぼ同時に背中をがっちりと誰かに抱きとめられた。
「っぶね。」
……落ちなくて良かった。
咄嗟に思ったのはそんな事。驚くほど心臓はバクバクと音を立てて、今にも壊れそう。
それから、やっと誰かに助けてもらったのだと理解した。
「大丈夫?」
「すみません!本当にありがとうございました!」
助けてくれた男子生徒に声を掛けられ咄嗟に頭を下げる。この人が助けてくれていなかったらと考えると…怖いからやめておこう。
「……佐々木さん?」
「へ?」
私が顔を上げるより先に、男子生徒が私の名前を呼んだ。
軽いパニック状態だった私は、抑揚のない透き通った聞き覚えのある声に勢い良く顔を上げた。
「…松風くん…?」
そこに立っているのは紛れもなく、相も変わらずかっこいい、同じ学校の制服を着ている松風くんだった。