ねぇ、松風くん。


しまった…と思った時には、時すでに遅し。

早川くんが壁に手をついた。
もちろん、私越しに。


あー、なるほど!
これがいわゆる壁ドン。

へぇ〜、マンガの世界だけかと思ってたけど実際にもあり得るシチュエーションだったんだね。


…って、


「早川くん!近い!!」

「優さんは俺に、口より手を動かして欲しいんだろ?」

「…ん?…うん。」


”なら…”といつものように意地悪な笑みを浮かべて私を見下ろす早川くんは、やっぱり整った顔をしている。

でも、不思議とドキドキしたりしない。


「…なら、口塞いで。」

「……………へ?」


口を塞いで欲しいの?
ガムテープは生憎 持ち合わせてないけど、何か口塞げそうな物あったかな?

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