ねぇ、松風くん。
「早くしないと時間なくなる。」


それだけ行って私の先を行く松風くんの腕の中には、さっきまで私の腕の中にあったクラス全員分の英語のワーク。


「葵かっこいー!」

「うっせ。お前も早くしろ。授業遅れんぞ。」


高瀬くんの冷やかしを心底うざったいと言った顔で流し、尚もスタスタ階段を上っていく。


昨日も思ったけど、本当にこの人はどこまで優しい人なんだろう。

…一目惚れだったはずなのに、松風くんの優しさにますます深みにハマってしまっている自分に気付いた。
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