ねぇ、松風くん。


そんな事をぼんやり考えていた俺の視界に、部屋の隅っこに置かれた早川のスクールバッグが写る。


きっと、休憩中に使ってロッカーにしまうのを忘れたんだろう。


「ったく、無用心かよ。…ん?」


スクールバッグの上にただ乗っているだけのラッピングされた袋に気付き、俺は興味本位で近寄る。


「……クッキー。」


入っていたのは可愛い星型のクッキーだった。

これは完全に女からだな。
”女には困ってない”らしいし、ルックス的にも早川はモテるだろう。


別にクッキーの1つや2つ、もらっててもおかしくないか。


なんて、変に納得している自分に驚く。早川は口は悪いけど、仕事は一生懸命やるし、きっと悪いやつじゃない。


分かってんのに、腹が立つのは…やっぱり佐々木さんが無防備だからなのか。


佐々木さんが無防備だとなぜ腹が立つのか……その答えはきっともう少しで辿り着くだろう。

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