ねぇ、松風くん。


しかし、いざって時はトイレに行くふりをして帰ろうと企む私は入り口からすぐの1番左端の席に座った。


「こらこら!優ちゃん、女の子の隣はダメだって!」


爆音で流れるカラオケの音楽に負けないよう、耳元で聞こえた声。


「お願い!見逃して!女子1人多いし、私 合コン興味ないから端っこにちょこんと置いといて!」


負けじと私も大声で返す。
そう、人数合わせのために呼ばれた私が菜穂も…といった事で女子が1人多いのだ。


「んもぉ〜、仕方ないなぁ!」


「ありがと、夏帆ちゃん!」


たまたま隣に座った夏帆ちゃんは、意外にも融通の利く子だった。


よかった…これでどうにか地味に生息できそう。ひたすらジュースとトイレを行き来しよう。


そう密かに心に誓う。

< 59 / 284 >

この作品をシェア

pagetop