ねぇ、松風くん。


気づけば見慣れた近所のパン屋さん。


この角を右に曲がればHoney café。直進すれば私の家が5分ほどで見えてくる。


松風くんは、いつもバイト終わりにHoney caféからパン屋さんとは逆の方向へ帰っていく。


「あ、松風くん!ここで大丈夫。わざわざ送ってくれてありがとう。」


つまり、ここで別れれば松風くんもパン屋さんを右折して帰れる。お互いの家への分かれ道、と言うわけだ。

歩く事をやめた私に、松風くんも足を止める。

「…佐々木さんち、直進?」

「あ、うん。もう5分くらいで着く。」

「了解。」

「え、ちょ‼︎ 松風くんの家は…」


再び歩き出した松風くんは、何の迷いもなく私の家の方角へ歩き出す。

きっと、なんで?と問えば”俺、送ってくって…言わなかったっけ?”って言ってくれるんだろうな。
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