ねぇ、松風くん。
「あ…。」
そう呟いて歩みを止めたのはまぎれもない松風くんで。
気付いてくれた嬉しさと、どうしたらいいのか分からないもどかしさとで頭がいっぱいいっぱいになってしまった。
「…佐々木さん。」
そんな私をよそに、いつものトーンで私の名前を呼んだ松風くんに嬉しさが勝った私は駆け寄ろうと足を踏み出した。
「優ちゃん。」
「へっ…わっ!」
「…行かないで。」
なぜか背後から伸びてきた腕に腰を絡め取られた私は、そのまま潤くんの腕の中にスッポリと収まってしまって、
「あ、あの…ちょ、潤くん?」
潤くんの温もりを背中に感じながら、廊下に立っている松風くんを見つめていた。