ねぇ、松風くん。
「俺、自分の気持ちに正直だからさ、ごめんね優ちゃん。」
菜穂の言葉を聞いても尚、潤くんの目には強い決意さえ感じられて私はただ潤くんを見つめるしかなかった。
「…フハッ、そんな見つめて惚れちゃった?」
「ち、ちがっ!」
いきなり吹き出した潤くんが、目を細めて小首をかしげながら私を見るから勢いよく首を振ってしまった。
「分かってるっての。そんな必死に否定しないでよ。」
笑ったかと思えば、今度は切なげに顔をしかめる。
やだやだ、やめて。
何だかすごい悪いことした気分。
「とりあえず、出直すかな。またね優ちゃん。」
当たり前のように慣れた手つきで私の頭にポンポンと手を乗せ、ヒラヒラ手を振って去っていく潤くんにただ圧倒されてしまう。
結局、潤くんが教室を出て見えなくなるまで何も言えず見送った。