君からのアイラブユー
「矢吹くん、ちょっとここに座ってもらえますか」
私は隣の席に座るように指をさした。矢吹くんは大きなあくびをして目を擦っている。
そのやる気のない矢吹くんに私はバンッ!と机を叩いた。
「いいですか、よく聞いて下さい。本来赤というのは危険な色を表すのです。信号、道路標識、
火事のポスターに警告を知らせる色も赤です。つまり赤点というのは危機なんです」
「……」
「だから赤点はまずいです。勉強してください」
「はい」
素直な返事が返ってきて私は安心していた。なんだかはじめて気持ちが伝わった気がする。
勉強が苦手でも暗記さえできれば乗り切れるだろうし、これからは私のスケジュールに矢吹くんの勉強を入れよう。
この前まで矢吹くんとは何の関係もなかったけれど勉強だけは教えられる。
塾ではみんなライバルで馴れ合いはほとんどしないから、誰かに教えてみたいと思っていたのだ。
「では矢吹くん、早速……」
「あ、そうそう。たい焼き食いにいかない?」
「……」
「あそこのたい焼き超うまいんだよ!安達なに味がいい?」