君からのアイラブユー
その後矢吹くんは無理やり私の腕を引き、学校近くの小さなたい焼き屋さんへと行った。スザク通りと呼ばれてるここはよく生徒達のたまり場になっていると聞く。
「矢吹くん、買い食いはいけませんよ。そんなに食べたいのなら一旦家に帰り着替えてからここに集合しましょう」
「めんどくさいし、やだ」
「……そのなんでも面倒がるのやめませんか」
生徒手帳に下校途中に飲食してはいけないとは書いてない。しかし学校が終わったら寄り道せずに帰るのが当たり前の事。明日の塾の為に予習もしなくてはいけないし。
「おっちゃん。たい焼きのあんこ2つね」
私の話なんて無視して矢吹くんはたい焼きを注文してしまった。私は深いため息をついてお店のベンチに腰掛ける。
全く矢吹くんと会ってからため息しか出ません。だいたい矢吹くんは……とグチグチ心の中で文句を言っている内に甘い香りが風に乗ってきた。
「はい、安達の分」
たい焼きは熱々の出来たてで包まれている紙からは湯気が出ていた。
「はぁ、こんな場面を先生に見られたらどうするんですか?」
「でもこの前、生活指導の小林も学校帰りに食ってたぜ」
「……小林先生が食べていたなら私も食べましょう」
「小林とどういう関係!?」
今度は私が矢吹くんを無視してたい焼きを一口かじった。あんこは私の好きな粒あんで少し感動するぐらい美味しかった。
「うまいだろ?安達と一緒に食べたいなーって思ってたんだ」
隣に座った矢吹くんは嬉しそうに言った。