君からのアイラブユー
思えば誰かとこんな風にたい焼きを食べたのは初めてだ。今まで学校帰りに寄り道をしたことはないし、誰かとベンチで肩を並べたこともない。
物心ついた時から勉強一筋で耳にはリスニングのイヤホン、手には参考書が当たり前だった。そんな中で楽しそうに遊びにいく同年代の子とすれ違ってもそこに感情は湧かない。
だって好きなこと、やりたいことはそれぞれ違うし私は今もこれからも自分の生き方を曲げるつもりはない。でも――。
「矢吹くん、そんなに私とたい焼き食べるのが嬉しいんですか?」
「は?当たり前だろ」
矢吹くんは色々と分からない人だけど、私に対しての気持ちは真っ直ぐにぶつけてくる。そんなに隣で嬉しそうな顔をされたら私も甘くなってしまう。
結局私は調子が狂ったままたい焼きを全部食べてしまった。
「途中まで一緒に帰ろうぜ」
そう矢吹くんが立ち上がる頃には辺りはすっかり夕暮れ時。矢吹くんは私の知らない歌を口ずさんでいた。
キラキラと矢吹くんの明るい髪が夕日に反射している。校則違反ばかりの髪やピアス、だらしない制服もなんだか見慣れてしまった。