君からのアイラブユー




「あの、矢吹くんは今まで恋愛経験はあるんですか?」

2歩先を歩く彼に尋ねてみた。

「ま、まぁ、まぁーね」と矢吹くんの声がおかしい。急にポケットに手を入れてみたり早歩きになったり。


「嘘は嫌いですよ」

「……」

「矢吹くん?」

「はいはい、ないです一度も」


何故か矢吹くんはムスッとしている。

恋愛経験がないのはダメなことなのだろうか?
私もその知識に関しては無知なので分からない。


「では私が初恋だと?」

「はぁ!?普通そうゆーこと聞くか?」


これは聞いてはいけないことだったらしい。

書店に恋愛初心者についての本は売っているだろうか?今度見てみよう。


「……安達はどうなんだよ?」

矢吹くんが足を止めた。その顔はどこかまだ不機嫌。


「ありませんよ。そもそもお付き合いする人は将来結婚する人だと決めているんです」

「……まじか」


私の父と母は大学時代に知り合い結婚した。お互いはじめての恋愛だったらしいし私も勉強が落ち着いて将来の見通しが出来たら考えようとは思っている。

矢吹くんはその後も「えー」「そっか……」「うーん」を繰り返していた。何かを考えてるような、うなだれているような。


「よしっ!!じゃ、俺と結婚……」

「しませんよ」

「……」

「そんな将来の約束なんて簡単に出来ません。
結婚する相手は収入が安定していて家族想いで心が広い人と決めてるんです」


< 21 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop