君からのアイラブユー
犯人にされそうになってるのになにも言わないこと。
まるで慣れてるみたいに傷ついてないフリをしてること。
その全部が私には理解できなかったんだ。
「あの時すげー嬉しくて。それからいつも安達のこと見てた」
矢吹くんが照れながら私を見た。
やっと知れた矢吹くんのカッコ悪い理由。
「……すいません、私全部忘れていました。勉強以外のことはなるべく記憶に残さないようにしてきたので……」
こんな大切なことを忘れていたなんて自分が情けない。
「本当だよ。まぁ、最初は礼を言えたらなぁ……
ぐらいにしか思ってなかったんだ。でも安達を見てたらどんどん好きになってる自分がいて」
「……」
「安達はいつも勉強ばっかりして勉強のことしか頭になくて。だけど集中しすぎて本読みながらつまずいたり飛んでる鳥にビックリしたり。そんな姿がすげぇ可愛くて……いつか安達の世界に飛び込みたいって思ってた」
私は私の作った世界に満足してた。
勉強が全て、学力が全て、それは私を満たしてくれる絶対的なものだった。今だってそう。そこに妥協はしないし目指すものは変わらない。
だけどきっと……。
矢吹くんがいない世界は退屈で、なにもかもがつまらないと感じてしまうだろう。