月、満ちる夜に
 
「起きたのか」


 男の声に、怪我の痛みをひとつひとつ確認していたわたしは動きを止めた。


 初めて聞く声。


 少し居丈高な、低い声にわたしの中の何かがざわめく。


 わたしはこくりと唾を飲み込んで顔を上げた。


 声の主を見る。


「伊達君……?」


 いつからそこにいた?


 ――いつから、学校にいるの?


 わたしは聞きたい言葉を飲み込み、落ち着いた様子を取り繕う。



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