月、満ちる夜に

「……実は伊達君のことが好きなの、っていう前フリとか?」


「なんで知らないやつにホレなきゃならんのさ」


 少し怒ったように否定すると、彼女は黙り込み、あらためて伊達君とやらを見る。


「今日、転校してきたとか思ってるんだったら、あんたヤバいよ?」


「どうして?」


「だって伊達君は入学した年から三年間ずっと同じクラスじゃない。あんた、昨日まで普通に伊達君と喋ってたでしょ? 覚えてないって、頭打ったんじゃないの?」


 え、


 ……そんなはずはない。



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