月、満ちる夜に

 だってあの人が座ってる席は最近まで空席だったはずだ。


 高校入学してからずっと同じクラスだった女の子が座っていた席。


 二学期が始まってすぐ、転校してしまったけれど。


 特に親しくしていたわけではないけれど、何度か話したことくらいはある。


 あんな男の子とは明らかに別人だった。


 髪が長くて、ちょっと背が低くて、少し早口で話す女の子。


 名前は確か――。


 そこまで思い返して、ふと思考が止まる。



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