月、満ちる夜に

 そんなはずないのに。


 伊達さんは、二学期が始まってすぐに転校して、席はずっと空席で……。


 でも、伊達君は初めからそこにいて、わたしたちは普通に話したこともあって――。


 なんだか頭がグワングワン揺れていて、冷や汗が額に浮かぶ。


 理解のできない事象を、むりやり納得させられるような違和感。


 伊達君……、


 どうしてわたし、


 突然、伊達君がこちらを振り返った。


 綺麗なくらい整った顔立ち、濡れ羽色の髪は振り向いた弾みでサラサラと揺れている。



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