涙雨
ただただ走り続け、やっと千佳のアパートが見えた時、近くの公園のベンチに座る人影が見えた。
肩甲骨くらいまである茶色の髪に俺と同じ制服。
間違えるはずなかった。
「千佳!」
俺の呼ぶ声に反応し、振り向く千佳を俺は力強く抱きしめた。
抱き締めた千佳の身体は細くてとても冷たかった。
千佳は俺の名前を呼ぶとごめんと呟いた。
泣き続ける千佳を、俺はただ抱き締めた。
千佳が無事だった事が今の俺にとっては何よりも安心した。