涙雨


アパートの下には、タクシーを呼んだ悠が立っていて、あたし達は悠のマンションに向かった。


部屋に着くなり、あたしは安心感に包まれた。


何もない、殺風景な部屋だけど。

この部屋に初めて来た時から、すごく居心地が良かったんだ。



「千佳。荷物は明日にして先風呂でも入れよ」

悠の言葉に甘えてあたしは脱衣所に向かった。


膝と口の横の傷が少ししみて痛く、明日の学校でどう誤魔化そうか。なんて鏡を見ながら考えていた。


「悠〜お風呂あいたよ」

タオルで頭を拭きながらリビングへ行くと空き部屋らしき所から悠が出てきた。


「今日からここが千佳の部屋ね!」


嬉しそうに笑いながらあたしの腕を引っ張って案内してくれた。


「ありがとう」


悠の笑顔にあたしは弱いみたいだ。
心が暖かくなっていくのが分かる。


「あーーー!!!!」


突然悠が声を上げてあたしの肩も跳ね上がる。


「ど、どうしたの?」

「シチューの火止めんの忘れてた!」

そう言って焦って台所に向かうとセーフと言ってお皿に盛り付けはじめた。


あたしの部屋の案内してるうちにシチューのこと忘れてたんだろうな。


それから二人で、お笑い番組なんて見ながらご飯を食べたりして。

傷の手当てもしてくれた。


久しぶりに心から笑い、安心できたよ。






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