涙雨
あたしが目を覚ますと時計は7時前だった。
悠は隣でまだ寝ているようだけどあたしはベッドから身体を起こして支度を始める。
結局、あたしがバイトに行くまで悠は起きないからご飯にラップをかけ、鍵を閉めてバイトに行くことにした。
悠の家からあたしのバイト先の全部があのボロアパートからは近くて楽だった。
そして9時前にはバイト先に着き、制服に着替え仕込みの手伝いをする。
今日は仕込みの手伝いだけでバイトが終わるという貴重な日。
とは言っても、それなりに忙しくて3時になる頃にはかなり疲れながら私服に着替えていた。
少し時間もあったから化粧なんかもした。
悠の知り合いに恥じないようにしないと。
準備を終えて外に出ると、いつもと違って制服姿じゃない、黒のTシャツに白のジャケットで白のパンツ。
セットされた金髪の髪の毛が映えていてモデルのような姿で。
いつもと違う悠にドキドキしてしまった。
「おつかれさま千佳」
通り過ぎる女の子達がこっちをチラチラと見て騒いでるのが分かる。
『まって超かっこよくない?』
『なに!?なんかの撮影?』
『隣の女の子も綺麗〜』
悠はそんな周りの声なんて聞いていないのか、あたしの顔に自分の顔を近づけた。
「あれ、千佳。化粧してる?」
「う、うん。悠の知り合いに恥じないようにと思って。もしかして変だった…?」
悠はニヤニヤとしながらゆっくりと顔を離してあたしの手を握った。
「色っぽすぎて俺の心臓もたないかも」
すでにあたしの心臓は破裂寸前なんですけど…。
握った手を解かないまま、あたし達は悠の知り合いの所へ向かう。