【完】午後7時のシンデレラ
「ただ...」
「「ただ?」」
スタッフさんの言葉に、わたしとマネージャーさんの声が重なる。
気まずそうに頭をかくスタッフさん。
「藤井さんが失踪してしまったので相手役の子が、怒って帰ってしまいまして...」
まじか。
目をパチパチさせて、マネージャーさんと顔を見合わせる。
ということは、
「撮影、中止ですか?」
「志保、嬉しそうな顔をするな!」
「いだだだだ!」
つい危機回避が嬉しくて、顔に出てしまったみたい。
マネージャーさんにぐいっと、ほっぺを引っ張られる。
やっとのことで放されたほっぺは、ヒリヒリと痛む。
「しかし、心配はいりません!」
にかっと強気に笑うスタッフさんを見上げる。